トランスジェンダー女性とオリンピック
産経新聞から
「女性の権利」に垣間見る朝日の思惑 イスラム思想研究者・飯山陽
開催中の東京五輪の話題のひとつは、五輪史上で初めてトランスジェンダー女性の出場が認められたことだ。
ニュージーランドの重量挙げ選手、ローレル・ハバード(43)がその人である。
朝日新聞デジタルは6月13日、「ジェンダー平等の意味や自分らしく生きることの価値について議論が広がりそう」とこの決定を称賛。さらに、「トランスジェンダー女性が競技上有利という科学的根拠は、既存の研究を網羅した分析で見つかっておらず」と公正さを強調したが、これには異論がある。
スポーツ科学者のロス・タッカー氏は数年前から科学的根拠に立脚し、男性ホルモンのテストステロン治療を受けた後でも、トランス女性は生物学的女性よりパフォーマンス面で大きな優位性を保っていると指摘している。テストステロン値が一定以下ならば女性競技への出場を認めるという、五輪ガイドラインに対する反論だ。
6月22日には英紙タイムズにその旨を寄稿してもいる。タッカー氏は、スポーツは人権でありトランス女性にもその権利は保障されねばならないが、「包括性」を優先させてトランス女性に女性競技への出場を認めることは、生物学的女性の「公平性」を犠牲にすることになると警鐘を鳴らす。
そもそもこれまでなぜスポーツ競技が男女別で行われてきたかというと、男女間の生物学的な違いが大きいからである。男性は女性と比べて、スピードに関しては平均して10%、筋力やパワーに関しては20~30%有利であり、競技を男女別にしない限り、特にエリートレベルのスポーツにおいては女性の勝利の可能性は失われるとタッカー氏は述べる。
今でこそ女子スポーツは世界的に認められる存在となったが、ここに至るまでには女性たちの長く厳しい闘いがあった。トランス女性の権利のために、女性の活躍の場や機会、公平性や安全性が失われるようなことはあってはならない。
日頃、女性の権利についてやかましい朝日新聞が、トランス女性がからむ問題においては女性の権利をいとも簡単に退けるのは異常である。トランス、女性、男性という「階級」を生み出し、この順番で優先されねばならないという「序列」を押し付け、社会を分断し混乱させようとする、朝日の思惑が垣間見える。
原文は下記URL。
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